機材的独白まとめ 

一つの筐体でピンクノイズ発生器+フィルターの、小型ノイズシンセがあったらなぁと思う。
モジュラーシンセを調べると、ノイズジェネレータにマルチモードフィルターのモジュールを配置していけば結構なことができそうな気もするが、それをパッチしてどうこうという話になると、煩雑な上に、落ち着くまでに数十万かかる。この歳になってだんだん気付いてきたけれど、私以外のこの世のシンセ使いは、だいたいお金持ちらしい。
自由にノイズを作れる発生器という意味が最大ではあるものの、それを除いても、最近、むやみに、モジュラーシンセが欲しい。
調べてみると、EMSのようなスーツケース型モジュラーや、スーツケース型ケースなどもあって、モジュラーシンセは結構充実しているらしい。ケースにはめ込むモジュラーたちときたら、見たことも聞いたこともないメーカーがYoutubeなどにひしめいていて、それらを輸入して買ったり、自分でモジュラーを作ったりして“自分用シンセ”を日夜組み上げている人も結構いるようだ。知力、体力、能力、財力など、ただただ呆然と見守るばかりである。
DOEPFERに、マルチフィルターやスプリングリバーブのモジュールの存在を知ったことだし、その気とお金があれば、それなりの試行錯誤ができることだろう。

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モノシンセのヴォリュームつまみとホイールとベンダーとポルタメントつまみが左手にまとまって配置されてないと、楽器としてどうなんだ、と思ってしまう。
が、そういう配置のシンセの少なさを思うに、そう思う自分がユーザーとして少数派なのだろう、とも思う。

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デジタル部分の低価格化とか、円レートとかを考えると、Prophet08とProphet5って、価値的にそんなに違わないのかもという妄想がある。音というより耐久性の話で。自分の延長になるまでいじり込んだら、デジタルツマミがガリってトラウマになったことがあり。
08の実機を触ってみたことがあるが、音的には確かに非常に魅力的なものだ。鍵盤のないモジュール版のものに深い関心を覚える。
しかし、エディットに大いに煩雑な点があるという掲示板も見かけた。買うからにはそれなりの調査と覚悟が必要だろう。
初代n○rdを1年いじって自分の音が出ずに売った。自分の音出たけど操作性の酷さとデジタルガリでトラウマになった別のシンセもある。MOCROKORGは気に入ったが4音ポリだし始まってしまった老眼にはきついしで次世代を待ってたらXLで実質エディット不能になってデータ移行も出来ず。RADIASは「きっとあなた向きではない」と楽器店に止められて、我慢してたらやはりデジタルガリの問題が出始めているらしい。
いつか自分向きのワークステーションが出ると信じてきたが、気が付いたら、シンセはシンセとして使いたくて、鍵盤は消耗品として考えてもいいかな、と思い始めている。どんなに高価なシンセでも、鍵盤は数十年弾きこむと壊れてしまう。物理構造がそのようにできているのだろう。あるいはそのうち、PCが1msec以内に全ての処理を余裕でやってくれる時代が来るかもしれない。来ないかもしれないが。みんななんでレイテンシーに慣れることができるのか。

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PAシステムのない場所で、極めて小規模な状態で、満足のいくライブというのは可能だろうか、ということについて、実は私は、何年も考え続けている。
いま調べたら私が最後にライブを行なったのは2004年。このときも、MICROKORG一台でやったのだが、音響機材を持ち込まなければならないので、結局ライトバンが必要になったし、多くのスタッフのご尽力も頂いた。
そのライブよりもさらに個的なライブというのは、果たして可能なのか。そしてそれは、お客さんにとっても舟沢にとっても納得の行くものなのか。そして、そもそもそういったことについて考えることは、怠惰か否か。
私の場合、必然的に「盛り上がるライブ」ではなくなってしまうのだ。
実をいうと、ここ数年、フリー・インプロの人々の活動を拝見しに行ったりしている。
音響機材が備え付けてある場所で“こころみる”ことが出来る場というものが、都内にもいくつか存在しているようだ。
この世のどこかに、取り付く島はないのか。

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GrooveAgent使おうとしてプルダウンメニューにLM-4を見つけて急にむなしさがこみ上げてきたけれど、リンドラムを買った人のことを思い浮かべてむなしさに耐えている。がしかし、当時リンドラムを買った人はきっとモトを取ったろうと思う。が、そういう問題かとも思う。
―以上をわかりやすく言うと‥
「おまけのドラムマシン」を使おうとしたら、数万円で買ったドラムマシンが出てきた。それはとても使いづらく、それほど音のいいものでもなかった。それをお金出して苦労して使ってた自分の努力はなんだったんだ、と空しくなった。でも、それよりも昔、それよりもはるかに音が悪くて使いづらい、百万以上するドラムマシンを買っていた人々よりはましだろう、と思ってみた。しかし、ドラムマシンが100万以上する時代は、ドラムマシンを持ってるだけで100万円以上の仕事が来たのではないかと思うと、100万以上するドラムマシンを買った人も一概に徒労ではなかったのかもしれないと思う、しかし、これでは投資を回収したという話にすり変わってしまっている。音楽をする人間としてはリンドラムを買った人はどういう思いで今を生きているのか、とでもいうような思い。

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ソリーナや、ホーナーのストリングマシン(Hohner String)のような原始的な電子キーボードに興味がある。
あれらが内蔵するコーラスが、ほかで真似できない音がするのだ。
色々調べてみると、「あのコーラス部分だけエフェクターとして抜き出して売ってくれないか」というミュージシャンもおられるらしい。シンプルにして複雑。単音であっても飽きない、川の流れを見つめているような、留まらない、豊かな持続音。
ただあれらにはエンベロープもフィルターもない。やはりエフェクターとしてあれば素晴らしいということか。ではなぜ現れない。いや、私が知らないだけで、どこかに存在しているのか。

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MICROWAVEで、8レベル8レートのエンベロープ(しかも任意の区間をループできる)が何にでも簡単にアサインできて、アナログノイズとアナログフィルターを8音ポリで好きにモジュレートできたのは本当に素晴らしかった。中を開けるとカーチスフィルターにはピンクのと茶色のがあって、茶色のほうが音が太くて2台買っても整合性が取れなかった。WAVESLAVEというMICROWAVEの拡張機で16音に拡張して使っていたが、フィルターの太さは整合しなくて、必要な太さの場所で必要な太さの音が出るように逆算して手弾きしていた。つらかった。
MICROWAVE~PPG系列に私が魅力を感じてしまうのはモジュレーションの自由さにある。マトリクスエディットも慣れれば使いやすかった。単サイクル波形の切り替えにはそれほど素晴らしさを感じていない。ここでもきっと私は想定外なユーザーなのだろう。

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昨今、質の高い人はみんなアコースティックか、アナログモジュラーか、ソフトだけで淡々と労務をこなすかのようだ。「いつかアナログと遜色ない音と反応と操作性の64音ポリが現れる」と思ってたら虚空に放り出された。もがいて何年経つだろう。「なんとかしなきゃ」って思ったのって20世紀だった気がする。

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朝が来なくても、夜を想い、夜を生きることはできる、かもしれない。
それでも一応、朝は探す。
昼に夜をしみこませるためにだとしても。

炎上の仕組み 

システム理論とか、社会学のような、人間を外側から観察する学問を学んでいる人にとってはあたりまえのことなのだろうけど、
私にとっては、仕組みが分かるということは、
かなり珍しいことである。

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とあるSNSで、ある特定の学歴を持った人間を、
「カスの集まり」
と断言する日記を書いている人間がいて、
そのコメント欄が炎上している。
知人からそういう話題を聞いたので、見に行った。

いろいろ状況を見てみて、
炎上が起きる仕組みが、ある程度見えた気がした。

●1:
その日記の著者は、他人に読まれるということがどういうことなのかほとんどわかっていないし、
わかっていないこと自体に、気づいてもいないらしい。
ただただ思いついたことを、文章としてまとめるでもなく、論理が破綻したままメモ帳のように書きとめているに過ぎない。
悪意で書いている様子も、人を傷つけようとしている意図も、文章からは伝わってこない。
つまり、この著者にとって、文章を書くということは、まったく価値のない、興味もない、「認知の穴」のような場所で起きていることらしい。
そして、日記を非公開にするというアイデアも、思い浮かばないらしい。

●2:
この著者は、学歴に関するニュースを読んで、その反応として当該の日記を書いている。
つまり、ニュースを読んで、ニュースの文末にある“このニュースに関する日記を書く”をクリックして文章を書いている。
しかし、そうやって日記を書くということは、
・学歴に興味のある人々がトップページのニュースをクリックする
・学歴に興味のある人がそのニュースを最後まで読む
・そのニュースの文末に「○○卒はカスの集まり!」といった日記のタイトルがリンク付きで表示される
ということになる。

つまり、ネット上の夥しい人々から、流れ作業のように、学歴に興味のある人だけが分別され、タイトルに怒りを感じる人だけがその日記を読みにやってくる。
川の流れを用水路に引き込むようなイメージ。

よって、その日記に、怒りのコメントが大量に書き込まれる。

●3:
その人物は、数日後の日記に、概ね以下のように、自分のポリシーを書いている。
・書かれたコメントは消さない。その文章で恥をかくのは、書いた側だ。
・不快なコメントは、何を言おうとしているかはきちんと読まない
 ただただ「バカ」と書いていれば「お前がバカ」、
 「クズ」という言葉が書いてあれば「お前がクズ」、
 そうやって相手が書いた言葉を返してやっている。

これを読んで仕組みが見えてきた部分が大きいのだが、
・この著者は、怒りのコメントに対し、相手の怒りの原因を想像しようとする意思がない。
・怒りのコメントは、「怒ってるらしい」ということしか目に入っていない。読む意思もない。
・「バカ」といった単語だけを目に入れて、論点を読まず、そのまま「お前がバカ」と書き返している。
・悪いことを書き込まれても、削除はしない。恥をかくのは相手だ、と思っているから。

つまり、自分が悪いことを書いたという意識は全くないが、
他人に悪いことを書かれたことは認識できるらしい。
自分のメモ帳にいたずら書きされたような気分だろうか。

そういうわけで、コメント欄に、
罵詈雑言が果てしなく続く
という状態になっている。

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整理する。
1:大勢の人の目につくところに、人を怒らせるようなリンクを貼る。
2:リンクから入ってくる大量の人を怒らせるような文章を、非・論理的に書く。
3:怒りのコメントに、火に油を注ぐようなコメントで返す。
4:「3」のコメントの応酬が、果てしなく続く。
――以上が、無意識裡に行なわれていた。

初期インターネットでは、「フレーム(焔)」と呼ばれていたが、
このように、まるで数式のように仕組みが見える例は少ないと思った。

ちなみに、このような仕組みを意識的に作り上げようとする動きなら、
よく目にしている。
SNSが現れる以前には、掲示板などでこういう状況を面白がって作りたがる人間を、ほんとうに沢山目にしていたし、
商用ということなら、
ミスクリックを誘うバナー広告だってあるし、
「配信拒否はコチラ」と返信を誘う迷惑メールも来る。
(返信すると自動的に「読まれているアドレス名簿」に登録される仕組みになってるそうだ)

しかし、悪しき作為なしに、全く素朴に、
罵詈雑言の嵐になっているところは久しぶりに見たし、
それが生じるメカニズムがこれほどクリアに見えたのは初めてだったので、
まとめてみた次第。

ちなみに、私がこの日記の著者に、
ここに書いてあるようなことをメールで説いたとしても、
「文章の長い嫌がらせメール」とナナメ読みされるだけだろう。
気が向けば「お前がバカ」と返信してくれるかもしれない。

「荒らしは放置」「スルー力を養う」といった言葉の根拠が、
クリアに見てとれたのであった。
追記/補足を読む

ストライプハウスギャラリーにて取り扱い再開 

六本木のストライプハウスギャラリーにて、
舟沢作品の取り扱いが再開されました。
ご来廊の際には、係員にお気軽にお申し付け下さい。
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