名前のないシンセ
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機材寄りの話です。
正月早々、名前のないシンセを購入しました。

J.M.T SYNTH という、日本国内のメーカーさん(個人)のハンドメイド・シンセです。
知遇を得ているミュージシャン氏から、「お前に向いてそうなシンセが売られている」と連絡をいただき、仕様と画像を見て、すぐに購入を決定した次第です。
上記のメーカーさんのサイトや、購入したシンセサイザーの画像を見たときの、舟沢の率直な感想は、
「これが現役で売られている‥?」
「これが国内メーカーで売られている‥?」
「これが個人で作られている‥?」
「これがこんな安い値段で売られている‥?」
「このメーカーさんを俺が知らずにいた‥?」
という、深い驚きでありました。
これに関しては、基本的に「一品モノ」というか、
同じものを作るかどうか、これを書いている現時点では未定のようですし、
型番すら存在しませんので、
このシンセを紹介して誰かのお役に立つかどうか分かりませんが、
とりあえずざっと、書くだけ書いてみます。
尚、このシンセ、舟沢が購入した際の価格は、4万弱でした。
画像を見る限り、これ、欧米で作られて40万弱で売られていてもそんなにおかしくないように見えると思いますので、以下、一見辛口めいて書いてあるヶ所がありますが、「安さの理由」みたいな意味として読んで下さいませ。批判的な意図はありません。
------------------------
・パッチシンセというネーミングで売られていました。セミモジュラーというか、ある程度内部配線されているモジュラーシンセ一式が一枚パネルになっているものと思っていただいていいと思います。
・物凄くかっこいいパネルは、触ってみると金属っぽくありません。金属板に塗装しているのではなく、金属板にアクリルシールを貼ってあるようです。触った感じがとても意外で、「あれ?金属じゃないぞ?」と思ってしまいました。(ドライバーを使ってパネルを開けると、確かにアルミの板です)
・つまみは見ての通り金属製で、つまみの固さも非常にしっかりしています(やや固すぎると感じるくらい)。つまみに安っぽさは一切ありません。
・びっくりするほど軽いです。1キロちょっとというところでしょうか。
・セミモジュラーなのであたりまえといえばあたりまえですが、中途半端に大きいです。Amazonの箱にぴったり入りそうで入らない大きさ。持ち運びの利便性は考えられていません。ラックマウントも考えられていません。
・パネルを覆う木枠は、本当に未塗装のただの木枠です。底側も木の板で(スプールスの単板とのことです)、ゴム足が貼り付けてあります。
・DC9V~DC12Vのセンターマイナスアダプターで動くとのことです。付属してきたアダプターは12Vでした。(つまり、音の印象は12Vによるものです)
・MIDIはありせん。CV-GATEでコントロールします。
・電源スイッチが右の手元に位置し、場所的にちょっとしたはずみに間違えて押してしまわないかと不安になってしまいます。また、電源ON/OFF時にノイズが出ます。
・2VCO、1VCF、1LFO、1EG、ホワイトノイズ、S/Hといった構成です。
・VFOは2つともノコギリ波固定のようです。可聴帯域を1つのつまみで網羅しているので、ピッチは合わせづらいです。(fineつまみとか、帯域切り替えスイッチとかあればいいのにと思いました)
・フィルターは上のつまみがレゾナンスで、下のつまみがカットオフです。普通のシンセ(?)とは逆なので、さわるたびに「あれ?」って思います。(そのうち慣れるかもしれませんし、慣れないかもしれません。)
・カットオフのつまみも、効き出すポイントが普通のシンセとちょっと違ったカーブを描いています。閉じきったところから急激に開きだす部分があり、開ききる辺りはなだらかになっているイメージ。
・特筆すべきは独特なレゾナンスです。カットオフが不安定なのでしょうか、発振させると聴いたことのないピッチの揺らぎを伴うサイン波が出ます。この揺れ方をするサイン波は手持ちの他の機材では出せません。レゾナンスの発振というと「太い」というイメージがあるかもしれませんが、この発振はイメージ的に言うと「遠い」。なんだか「風の強い日に窓の外を聴いてる」みたいな、遠い音がします。(微かに発振するというわけではありません。はっきりと発振していて、質感が遠いイメージなのです。しいて言えばWASPのフィルターに近いですが、やっぱり「遠い」というのがいちばんしっくり来ます)
・ホワイトノイズも独特な遠さを持っています。
・エンベロープはアタック/リリースのみで出来ています。トグルスイッチでリピートできるので、LFOのような使い方もできますし、エンベロープをトリガーさせるスイッチも手元にありす。このエンベロープに「LEVEL」つまみがあり、VCAに「INITIAL GAIN」つまみがあるので、ドローン/ノイズ発生マシンとしては、けっこう融通が利く作りだと思います。
・LFOの変化幅は意外と狭く、最も遅いときに「ものすごく遅いヴィブラートくらい」、最も速いときに「FM寸前」というイメージでしょうか。LFOの波形は「三角波と矩形波の間を連続的に変化させるつまみ」がついていて、右に回しきると三角波(だと思う)、左に回すと矩形波になります。中間状態は、想像だと「矩形波がだんだんカドがとれて三角波」と思ってしまいますが、実際に使ってみると逆で、「三角波のカドがだんだん目立ってきて最終的に矩形波になる」ようなイメージです。この中間状態のカーブを脳内に描いてみようとするのですが、できません。紙にペンで「こんな感じのカーブになるのか?」と波形を書いてみたりするのですが、いまいち自信が持てません。とにかく中間状態では「ん?」と思う変わったLFOが出ます。
・S/H(サンプル・アンド・ホールド)は、単体では動きません。S/Hというと、すぐに「ギザギザしたランダム」だと思い、そのためには「あらかじめホワイトノイズをサンプルしてホールドしてるもの」と思いがちですが、そういった“通常の”S/Hを出すためには、ノイズジェネレーターのアウトをS/Hのインにパッチし、S/HのアウトをVCOなりなんなりにパッチしなければなりません。実際、LFOのアウトなどもS/Hにパッチすれば「キキキキココココ」と、「サンプルしてホールド」します。
------------------------
ざっと駆け足で書いて、こんな感じでしょうか。
以上、詳しい方が読んだらあたりまえのことや、間違っていることが書かれているかもしれませんが、どうかご容赦下さい。
舟沢、シンセ歴約三十年にして、
「はぁ‥これがモジュラーのパッチングというものなのか‥」
「はぁ‥CVとはこう使うものなのか‥」
「ははぁ‥いま思えばDOEPFER DARK ENERGY は、小さな筐体に色んな機能をうまいこと詰め込んであるのだな‥」
などと、基本の基本を学んでおります。
以上、万年初心者のレビューにて失礼いたしました。
正月早々、名前のないシンセを購入しました。

J.M.T SYNTH という、日本国内のメーカーさん(個人)のハンドメイド・シンセです。
知遇を得ているミュージシャン氏から、「お前に向いてそうなシンセが売られている」と連絡をいただき、仕様と画像を見て、すぐに購入を決定した次第です。
上記のメーカーさんのサイトや、購入したシンセサイザーの画像を見たときの、舟沢の率直な感想は、
「これが現役で売られている‥?」
「これが国内メーカーで売られている‥?」
「これが個人で作られている‥?」
「これがこんな安い値段で売られている‥?」
「このメーカーさんを俺が知らずにいた‥?」
という、深い驚きでありました。
これに関しては、基本的に「一品モノ」というか、
同じものを作るかどうか、これを書いている現時点では未定のようですし、
型番すら存在しませんので、
このシンセを紹介して誰かのお役に立つかどうか分かりませんが、
とりあえずざっと、書くだけ書いてみます。
尚、このシンセ、舟沢が購入した際の価格は、4万弱でした。
画像を見る限り、これ、欧米で作られて40万弱で売られていてもそんなにおかしくないように見えると思いますので、以下、一見辛口めいて書いてあるヶ所がありますが、「安さの理由」みたいな意味として読んで下さいませ。批判的な意図はありません。
------------------------
・パッチシンセというネーミングで売られていました。セミモジュラーというか、ある程度内部配線されているモジュラーシンセ一式が一枚パネルになっているものと思っていただいていいと思います。
・物凄くかっこいいパネルは、触ってみると金属っぽくありません。金属板に塗装しているのではなく、金属板にアクリルシールを貼ってあるようです。触った感じがとても意外で、「あれ?金属じゃないぞ?」と思ってしまいました。(ドライバーを使ってパネルを開けると、確かにアルミの板です)
・つまみは見ての通り金属製で、つまみの固さも非常にしっかりしています(やや固すぎると感じるくらい)。つまみに安っぽさは一切ありません。
・びっくりするほど軽いです。1キロちょっとというところでしょうか。
・セミモジュラーなのであたりまえといえばあたりまえですが、中途半端に大きいです。Amazonの箱にぴったり入りそうで入らない大きさ。持ち運びの利便性は考えられていません。ラックマウントも考えられていません。
・パネルを覆う木枠は、本当に未塗装のただの木枠です。底側も木の板で(スプールスの単板とのことです)、ゴム足が貼り付けてあります。
・DC9V~DC12Vのセンターマイナスアダプターで動くとのことです。付属してきたアダプターは12Vでした。(つまり、音の印象は12Vによるものです)
・MIDIはありせん。CV-GATEでコントロールします。
・電源スイッチが右の手元に位置し、場所的にちょっとしたはずみに間違えて押してしまわないかと不安になってしまいます。また、電源ON/OFF時にノイズが出ます。
・2VCO、1VCF、1LFO、1EG、ホワイトノイズ、S/Hといった構成です。
・VFOは2つともノコギリ波固定のようです。可聴帯域を1つのつまみで網羅しているので、ピッチは合わせづらいです。(fineつまみとか、帯域切り替えスイッチとかあればいいのにと思いました)
・フィルターは上のつまみがレゾナンスで、下のつまみがカットオフです。普通のシンセ(?)とは逆なので、さわるたびに「あれ?」って思います。(そのうち慣れるかもしれませんし、慣れないかもしれません。)
・カットオフのつまみも、効き出すポイントが普通のシンセとちょっと違ったカーブを描いています。閉じきったところから急激に開きだす部分があり、開ききる辺りはなだらかになっているイメージ。
・特筆すべきは独特なレゾナンスです。カットオフが不安定なのでしょうか、発振させると聴いたことのないピッチの揺らぎを伴うサイン波が出ます。この揺れ方をするサイン波は手持ちの他の機材では出せません。レゾナンスの発振というと「太い」というイメージがあるかもしれませんが、この発振はイメージ的に言うと「遠い」。なんだか「風の強い日に窓の外を聴いてる」みたいな、遠い音がします。(微かに発振するというわけではありません。はっきりと発振していて、質感が遠いイメージなのです。しいて言えばWASPのフィルターに近いですが、やっぱり「遠い」というのがいちばんしっくり来ます)
・ホワイトノイズも独特な遠さを持っています。
・エンベロープはアタック/リリースのみで出来ています。トグルスイッチでリピートできるので、LFOのような使い方もできますし、エンベロープをトリガーさせるスイッチも手元にありす。このエンベロープに「LEVEL」つまみがあり、VCAに「INITIAL GAIN」つまみがあるので、ドローン/ノイズ発生マシンとしては、けっこう融通が利く作りだと思います。
・LFOの変化幅は意外と狭く、最も遅いときに「ものすごく遅いヴィブラートくらい」、最も速いときに「FM寸前」というイメージでしょうか。LFOの波形は「三角波と矩形波の間を連続的に変化させるつまみ」がついていて、右に回しきると三角波(だと思う)、左に回すと矩形波になります。中間状態は、想像だと「矩形波がだんだんカドがとれて三角波」と思ってしまいますが、実際に使ってみると逆で、「三角波のカドがだんだん目立ってきて最終的に矩形波になる」ようなイメージです。この中間状態のカーブを脳内に描いてみようとするのですが、できません。紙にペンで「こんな感じのカーブになるのか?」と波形を書いてみたりするのですが、いまいち自信が持てません。とにかく中間状態では「ん?」と思う変わったLFOが出ます。
・S/H(サンプル・アンド・ホールド)は、単体では動きません。S/Hというと、すぐに「ギザギザしたランダム」だと思い、そのためには「あらかじめホワイトノイズをサンプルしてホールドしてるもの」と思いがちですが、そういった“通常の”S/Hを出すためには、ノイズジェネレーターのアウトをS/Hのインにパッチし、S/HのアウトをVCOなりなんなりにパッチしなければなりません。実際、LFOのアウトなどもS/Hにパッチすれば「キキキキココココ」と、「サンプルしてホールド」します。
------------------------
ざっと駆け足で書いて、こんな感じでしょうか。
以上、詳しい方が読んだらあたりまえのことや、間違っていることが書かれているかもしれませんが、どうかご容赦下さい。
舟沢、シンセ歴約三十年にして、
「はぁ‥これがモジュラーのパッチングというものなのか‥」
「はぁ‥CVとはこう使うものなのか‥」
「ははぁ‥いま思えばDOEPFER DARK ENERGY は、小さな筐体に色んな機能をうまいこと詰め込んであるのだな‥」
などと、基本の基本を学んでおります。
以上、万年初心者のレビューにて失礼いたしました。
- [2012/01/07 10:14]
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シンセの木枠を塗装
先日購入したシンセの木枠を、
黒く、塗りました。
改造
愛用しているJ.M.T Synthさんの名前のないシンセですが、
自分好みに改造できないかメーカーさんに相談してみたら、
無事改造して頂くことが出来ました。
感謝、感謝でございます。
どこをどう改造して頂いたかは、内緒とさせて頂きます(笑)。
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