忘却と根幹 

魂に傷が入り、
長い年月をかけて治癒し、
遂には忘れ、
さらに長い年月が過ぎた後に、

唐突にそれは、
治ったというより、
さらに深い場所に移行していたのだ、
と気づくことがある。

血肉になるよりさらに深く、
骨にまで沁みこんで、自分の根幹と一体化しており、
もう、自分と切り離すことはできなくなっている。

考えてみれば、それは傷に限ったことではない。
言葉だって、歩き方だって、
覚えた時のことは、覚えていない。

忘れるということは、しばしば、
自分の根幹になる、ということであるらしい。

最近、忘れていたことを骨から思い出すことが増え、
それとともに、身近なことを忘れてしまうことが増えた。

忘れてしまうものごとと、
年を取って顕れる根幹と。

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